ムーミン展 2019-2021トーベ・ヤンソンが描く小説の挿絵や絵本の原画、広告、グッズなど約500点がやって来た!

ムーミン展の概要

ムーミンを始めとするトーベ・ヤンソンの作品を、フィンランド・タンペレ市にあるムーミン美術館と、弟ラルス・ヤンソンが設立したムーミンキャラクターズ社が所蔵するコレクションから約500点が展示されます。

私がムーミンに出会ったのはアニメでしたが、もとは小説だと知ったのは数年前です。いきなり9冊目の『ムーミン谷の十一月』を読みました。

ムーミンは、初めから今のムーミンではありませんでした。ムーミンらしき小さな生きものが現れ、少しずつ姿を変え現在のムーミントロールになっていきます。トーベは、戦火の苦難や恐怖から逃れるかのように、文章と絵でムーミンを育みました。

トーベの作品における、キャラクターの際立ちは言うまでもありません。しかし、森、海、洞窟、雨などのペン画の緻密な自然描写も群を抜いています。『ムーミン谷の彗星』では、同じ内容の挿絵を水彩画からペン画に描き直しています。

トーベは、愛らしいムーミンの物語で知られる児童文学作家ですが、一方で政治風刺雑誌『ガルム』に、スターリンのソビエトやヒトラーのドイツを批判する風刺画家でもありました。クスッとする風刺絵はムーミンの物語のゆりかごのようです。


2017年、北欧最大の会議・文化施設であるタンペレホール内に、ムーミン美術館がオープンしました。

ムーミン展の見どころはここ

ムーミン谷の物語

1943年、風刺雑誌『ガルム』の片隅にムーミントロールらしき小さな生きものが現れました。下図では「M」の右下に顔を覗かせています。


『ガルム』1944年10月号表紙 ※展示はありません

当時は第二次世界大戦(1939-1945)の最中で、戦火はトーベとその作品に大きな影響をあたえます。

「1939年、戦争の冬のことです。仕事はぱたりといきづまり、絵をかこうとしてもしかたがないと感じていました。・・・でも、王子さまや、王女さまや、小さな子どもたちを登場させることはやめて、そのかわりに、風刺まんがをかくときサインがわりにつかっていた、怒った顔をした生きものを主人公にして、ムーミントロールという名前をつけました。」

トーベは気分転換、現実逃避のひとつとして、小さな生きものを主人公にした子ども向けの物語を書き始めます。

1945年になり、ヘルシンキとストックホルムの街角の店頭に、ムーミンシリーズの初作となる『小さなトロールと大きな洪水』が並びました。


『小さなトロールと大きな洪水』1945年 ※展示はありません

この本は当初、話題にもなりませんでした。しかし、それに続く『ムーミン谷の彗星』(1946)、『たのしいムーミン一家』(1948)により、トーベはフィンランドとスウェーデンで有名作家の仲間入りを果たします。

ムーミンの物語は、25年をへて全9冊を数える人気シリーズとなりました。


「目に見えない子」スケッチ 1962年

小説全9冊の、挿絵スケッチ・表紙・表紙スケッチが展示されています。

ムーミンの誕生

トーベ・マリカ・ヤンソン(1914 – 2001)は、フィンランドの画家、作家です。

スウェーデン語系フィンランド人彫刻家の父ヴィクトル・ヤンソンと、スウェーデン人挿絵画家の母シグネ・ハンマルステン・ヤンソンの長女として、ヘルシンキで生まれました。

弟がふたりの三人姉弟で、上の弟ペル・ウロフ・ヤンソン(1920 – 2019)は写真家として、下の弟ラルス・ヤンソン(1926 – 2000)は小説家、漫画家としてそれぞれ活躍しています。

ムーミントロールらしき生きものが現れたのは、夏を過ごすサマーハウスの離れにあったトイレの壁でした。トーベが10代の頃、弟ペル・ウロフとの口ゲンカに負けたときに、トイレの壁に描いた大きな鼻の「SNORK(スノーク)」です。

また、ムーミントロールのネーミングは、叔父工イナル・ハンマルステンの話が元になっています。トーベは学校へ通うために、スウェーデンの叔父の家に下宿をしていました。夜になるとつまみ食いを繰り返す彼女に、叔父はそんなことをしていると「ムーミントロール」が出てきて、首の後ろに息を吹きかけるぞと脅したことがきっかけです。

ムーミントロールの原型となる生きものは、1930-40年代の水彩画に赤い目の黒い姿で現れます。


『B.E.コリアンデル』表紙 1943年(後年改作)

やがて体の色を白に変え、雑誌『ガルム』のイラストに小さく添えられるようになりました。

『ガルム』は1923年から1953年までヘルシンキで発行されていた、スウェーデン語系フィンランド人向けの政治風刺雑誌です。誌名は北欧神話に登場する地獄の番犬から採りました。

この雑誌に、シグネは創刊号からイラストを描いており、トーベも15歳から廃刊になるまで仕事をしています。

1945年になって、ムーミントロールはスウェーデン語で著された『小さなトロールと大きな洪水』に登場することになります。

『B.E.コリアンデル』表紙、『ガルム』表紙・挿絵、『ルシフェル』挿絵が展示されています。

絵本になったムーミン

トーベは4冊のムーミンの絵本を残しました。

『それからどうなるの?』(1952)

ページに穴が開いたしかけ絵本です。

「今回は小さい子ども向けの絵本なので、全部のページに絵と短い文章をつけます。・・・各ページに穴が開いていて、穴のところはドアだったり、洞穴の入り口だったり、タイルストーブの蓋だったりしながら、次のページにつながっています。登場人物はその穴を通り抜けて次のページに行き、びっくりするような出来事に次々と遭遇します。小さい子どもを惹きつけるには、びっくりを盛り込むことが大事です。」とトーベは友人に伝えています。

下図は切り抜く前の状態です。この見開きは、黄・赤・黒の3色刷りです。右ページの木にオレンジ色の子がいますが、黄に赤を50%ほど掛け合わせて作った色です。

右ページで木々の間の青は次のページの色。太陽のオレンシ色と紫は、そのまた次のページの色です。3色刷りですが、穴から覗く色を加えると6色になっています。

下図は木々の間の白地を切り抜きます。右ページの木の幹には(きりとりせん)がありますが、左ページ木々の間にはありません。この部分の(きりとりせん)は、ページの裏側についています。

ページの裏表に(きりとりせん)をつけると、印刷のズレにより切り抜くときに裏にした側の(きりとりせん)が残ってしまいます。そのため(きりとりせん)は、右ページにだけつけてあります。


絵本はショップで

『さびしがりやのクニット』(1960)

「私はちっぽけでみじめでひとりぼっち、誰も私のことに気づかないし、誘ってくれないし、何か言っても私のことなんか見てくれない。何もかも、怖くてたまらない」という、スウェーデンの読者からの手紙がきっかけとなりました。


絵本はショップで

『ムーミン谷へのふしぎな旅』(1977)

1970年に『ムーミン谷の十一月』でムーミン物語を終わらせたトーベは、7年後にこの絵本で再び読者をムーミン谷へと向かわせます。それはまた作者本人の、画家としてのムーミン谷再訪でもありました。


絵本はショップで

『ムーミンやしきはひみつのにおい』(1980)

写真家の弟ペル・ウロフが撮影したムーミン屋敷に、トーベが物語を添えた写真絵本です。

ムーミン屋敷は、トーベのの友人のトゥーリッキ・ピエティラ、医師のペンッティ・エイストラが1976年から3年がかりで制作した、高さ2メートルにもおよぶドールハウスです。


絵本はショップで

『ムーミン谷へのふしぎな旅』のスケッチが展示されています。

日本とトーベとムーミン

『ムーミンパパ海へいく』の雨の中でピクニックをする挿絵は、歌川広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》を連想させます。


歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》1857年

トーベは広重と同じように、雨を細い線で表し、浮世絵独特の表現であるやや俯瞰気味な構図と、遠方を霞(かす)ませることで、大海に浮かぶ小さい島を際立たせる効果を出しました。


『ムーミンパパ海へいく』挿絵 1965年

トーベの表紙スケッチ・スケッチ・挿絵、歌川広重の浮世絵、葛飾北斎の浮世絵・読本(よみほん)が展示されています。

ムーミン展の音声ガイドは櫻井孝宏さん

音声ガイドは櫻井孝宏(さくらいたかひろ)さんです。櫻井さんは埼玉県飯能市にある「ムーミンバレーパーク」のライブショーでスナフキン役も担当しています。

「今回の音声ガイドを通し、トーベ・ヤンソンさんの輪郭が見えてきたような気がします。」と櫻井さん。

貸出料金 = お一人様1台550円(税込み)

ムーミン展のインスタ映えスポットはここ

森アーツセンターギャラリーです。

松坂屋美術館です。ロビーにパネルがありました。

ムーミン展の混雑状況はここを見る

混雑状況は、美術館や展覧会のツイッターに掲載されます。
台風による臨時休館や、イベント情報などリアルタイムで分かります。

「ムーミン展」公式アカウント

あべのハルカス美術館

札幌芸術の森美術館

熊本市現代美術館

静岡県立美術館

来館者のツイッターで混雑状況を知ることもできます。
通常の検索で「ムーミン展 混雑 ツイッター」
または、ツイッターのキーワード検索で「ムーミン展 混雑」とします。

ムーミン展のグッズがかわいすぎる

ムーミン展の図録はここがすごい

『Moomin THE ART AND THE STORY』

表紙がクロス貼りです。タイトルやイラストは型押しがされてます。もとのイラストがスミ一色のペン画であることが、活かされているようです。

サイズは意図してか、トーベの評伝『トーベ・ヤンソン 仕事、愛、ムーミン』と同じになっています。

『ムーミン谷の冬』のスウェーデン語版初版より、展覧会に出品された作品の掲載ページを一部抜粋・縮小して綴じ込みとしてあります。取り外しはできません。下図上から3点目、右ページです。

ハードカバー/136mm×193mm/モノクロ・カラー/326ページ

価格=2,200円(税別) 

ムーミン展の割引にこんなのがあった

ムーミン展のチケットはいくら?

大阪展

当日券
一般 1,500円/ 大高生 1,100円/ 中小生500円

前売券・ 団体券
一般 1,300円/ 大高生 900円/ 中小生 300円

※団体は15名様以上。
※前売券は4月29日(水・祝)~7月3日(金)までプレイガイドなどで販売。
※障がい者手帳をお持ちの方は、美術館チケットカウンターで購入されたご本人と付き添いの方1名まで当日料金の半額。

札幌展

当日券
一般 1,500円/ 高校・大学生1,200円/ 小・中学生 900円

前売券・ 団体券
一般 1,300円/ 高校・大学生 1,000円/ 小・中学生 700円

※( )内は前売料金、または20人以上の団体料金。※65歳以上の方は当日料金が1,300円(団体1,100円)になります。年齢のわかるものをご提示ください。※障がい者手帳をお持ちの方は、当日窓口でご提示いただくとご本人と付き添いの方1名が無料になります。※一般1名、小・中学生1名(1,800円)券を、芸術の森、道新プレイガイド、市民交流プラザチケットセンター、教育文化会館、HTBコーナーで前売限定販売。

熊本展

未定

静岡展

当日券
一般 1,300円/高校・大学生・70歳以上 700円/ 中学生以下 無料

前売券・ 団体券
一般 1,100円/ 高校・大学生・70歳以上 600円/ 中学生以下 無料

※収蔵品展、ロダン館も併せてご覧いただけます。
※団体のお申込/20名以上の団体のお申込は、美術館総務課へお問合わせください。学生の団体を引率の場合、引率の先生は無料になる場合があります。詳しくは美術館まで。
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方と付添者1名は、企画展、収蔵品展とも無料でご覧いただけます。専用駐車場のほか、車椅子も完備しております。美術館総務課までお問合わせください。

ムーミン展の巡回先はここ

名古屋展 12月7日(土)~2020年1月19日(日)

松坂屋美術館(南館7F)
〒460-8430 名古屋市中区栄三丁目16番1号

アクセス
電車
○地下鉄名城線「矢場」駅 地下通路直結(5・6番出口)
○地下鉄「栄」駅16番出口より南へ徒歩5分


○名古屋高速 白川出口、東新町出口、東別院からお越しいただくと便利です。

開館時間
10時〜19時30分
※入館は閉館の30分前まで
※最終日1月19日は18時閉館

休館日
2020年1月1日(水・祝)

お問い合わせ
Tel.052-264-3611

岩手展 4月11日(土)~5月31日(日)中止になりました

岩手県立美術館
〒020-0866 岩手県盛岡市本宮字松幅12-3

アクセス
盛岡駅東口よりバス
岩手県交通バス『盛南ループ200』乗車、「県立美術館前」下車
○下川原 先回り(左回り)盛岡駅東口バスプール(10)番乗り場 美術館まで約13分 200円)
○菜園 先回り(右回り)盛岡駅東口バスプール (5)番乗り場 美術館まで約31分 200円)


○盛岡インターより約15分
○盛岡南インターより約15分
美術館に隣接する盛岡中央公園の駐車場をご利用ください。(無料)
(普通車 131台、軽自動車 12台、身障者用 3台、大型車 8台)
美術館敷地内身障者用駐車場2台

徒歩
○盛岡駅西口から20分

タクシー
○盛岡駅西口から5分

開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)

休館日
月曜日(月曜日が祝日、振替休日の場合は開館し、直後の平日に休館)

お問い合わせ
Tel.019-658-1711

大阪展 7(土)~830(日)

あべのハルカス美術館

〒555-0013 大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階 

アクセス
最寄駅
○近鉄「大阪阿部野橋」駅 西改札
○JR「天王寺」駅 中央改札
○地下鉄御堂筋線「天王寺」駅 西改札
○地下鉄谷町線「天王寺」駅 南西/南東改札
○阪堺上町線「天王寺駅前」駅 よりすぐ
あべのハルカス美術館へは、シャトルエレベーター【乗り口:地下1階、2階】をご利用ください。近鉄百貨店のエレベーターは直通では行けません。

開館時間
火~金/ 10:00~20:00
月土日祝/ 10:00~18:00
入館は閉館30分前まで

休館日
2020年7月6日(月)、13日(月)、20日(月)

お問い合わせ
Tel.06-4399-9050

札幌展 9月12日(土)〜11月3日(火・祝)

札幌芸術の森美術館
〒005-0864 札幌市南区芸術の森2-75

アクセス
公共交通機関
○地下鉄南北線「真駒内(まこまない)」駅の中央バス2番乗り場から、「空沼線・滝野線」に乗車、「芸術の森入口」下車
バス運賃
大人300円/小人150円(地下鉄乗り継ぎ料金あり)


札幌市内中心部より国道453号(札幌支笏湖線)約40分
○北広島ICより
(新千歳空港よりお越しになる場合は、こちらのICが便利です。)
国道36号線、道道341号線を常盤方面へ約21km
○札幌北ICより
国道5号線を札幌駅方面に向い国道453号線にでて
支笏湖方面へ約23km

タクシー
○地下鉄南北線「真駒内駅」から約2,100円(所要時間約15分)
○JRさっぽろ駅から約5,000円(所要時間約40分)

開館時間
9:45~17:00
※6~8月は17:30まで開館
※入館は閉館の30分前まで

休館日
会期中無休

お問い合わせ
Tel.011-592-5111
Fax. 011-592-4120

熊本展 1114(土)~2021年111(月・祝)

熊本市現代美術館
〒860-0845 熊本市中央区上通町2番3号
びぷれす熊日会館(通町電停又はバス停より徒歩1分)3階

アクセス
JR九州
○「熊本」駅から市電またはバスで15分、「通町筋」下車
○「新水前寺」駅から市電またはバスで10分、「通町筋」下車

高速バス
○高速自動車道熊本インターから車又は高速バスで30分、「通町筋」下車

開館時間
10:00~20:00
※入場は閉館の19:30分まで

休館日
毎週火曜日
※火曜日が祝日の場合は、翌平日休館

お問い合わせ
Tel.096-278-7500
Fax. 096-359-789

静岡展 2021年123(土)~314(日)

静岡県立美術館

〒422-8002 静岡市駿河区谷田53-2

アクセス
電車
○JR東海道線「草薙」駅県大・美術館口から、徒歩約25分またはバス約6分
○静岡鉄道「県立美術館前」駅南口から、徒歩15分またはバス約3分
バス
いずれも「県立美術館」バス停下車
○JR「草薙」駅県大・美術館口(南口)から、草薙美術館線県立美術館行き。約6分、大人100円
○JR「静岡」駅北口11番のりばから、県立美術館線県立美術館行き。約30分、大人360円
○静鉄「県立美術館前」駅下車、「静鉄美術館駅前」バス停より、草薙美術館線県立美術館行き。約3分、大人100円
※開館時間中は各路線1時間間隔で運行

開館時間
10:00~17:30
※展示室への入室は17:00まで

休館日
毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)

お問い合せ
Tel. 054-263-5755
Fax. 054-263-5767