メスキータ展 2019-2020

メスキータ展の概要

メスキータの日本で初となる回顧展です。

「エッシャーが、命懸けで守った男。」とは、どんな男か気になるところです。

エッシャーとは、言うまでもなくオランダの画家マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898-1972)、通称M.C.エッシャーです。

メスキータの展覧会に先駆け、2018-2019年に、東京、大阪、福岡、愛媛で「ミラクルエッシャー展」が開催されました。

私は、上図に見られる《相対性》をはじめとするエッシャーの作品は、リトグラフ(版画の一種で、平版画)ばかりだと思っていました。

しかし、この展覧会でエッシャーには、木版画も数多くあることを知りました。その若かりしエッシャーに、木版画を教えたのがメスキータです。

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868-1944)は、19世紀末から20世紀前半にかけてオランダで活躍した画家、版画家、デザイナーで、長く美術学校で教鞭をとりました。教え子のひとりがエッシャーです。

メスキータは様々な技法に挑みましたが、木版画を重視し明暗のコントラストとシャープな線を生かし、平面的でシンプルな作品を数多く残しました。

また、生涯を通じて描いたドローイングは、ゆるやなかな曲線で大胆にデフォルメされた人物たちによる、現実とも空想ともつかない世界を作りました。

ユダヤ人であったメスキータは、ゲシュタポ( ナチス・ドイツの秘密国家警察)に逮捕されアウシュヴィッツで亡くなります。

アトリエに残された多くの作品は、エッシャーたちが決死の思いで救い出し、大切に保管しました。

エッシャーは、メスキータの命までを守ることはできませんでした。しかし、彼は戦後に展覧会を開催するなどメスキータの名声を守りました

「彼は常に我が道を行き、頑固で率直だった。他の人々からの影響はあまり受けなかった。」とエッシャーが記しています。

メスキータの生涯

メスキータは、アムステルダムで生まれ、その地で生涯をおくりました。

ポルトガル系ユダヤ人の家系で、父親はギムナジウム(ヨーロッパの中等教育機関)でヘブライ語とドイツ語の教師をしていました。メスキータが5歳の時に病気で亡くなります。

1882年、14歳の時にアムステルダムの国立美術アカデミーを受験して不合格となります。建築事務所に見習いとして勤め、1885年に建築家になるために、国立美術工芸学校建築学科に入学します。

翌年に国立美術師範学校に転校します。1887年、初等教育の描画教師の資格を。1889年には、建築・機械製図資格、線描・投資画法資格を取得します。 

メスキータが初めて版画を制作したのは、1893年、25歳のときでした。そして1940年、72歳まで、47年間にわたって版画制作を続けます。

1902年に、ハールレムアムステルダムの西約20kmに位置するの応用美術学校の教師となり、閉校となる1926年まで教鞭をとりました。


サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ《ハールレムの市庁舎》911年 

1930年代には、アムステルダムの国立美術アカデミーでも版画を教えました。ここはかつて入学を断られた学校です。

メスキータには多くの教え子がいましたが、M.C.エッシャーはハールレムの応用美術学校でメスキータに師事しました。特にエッシャーの初期作品にはメスキータの大きな影響が見られます。


M.C.エッシャー《椅子に座っている自画像》920年 ※展示はありません

1924年と1932年には、ヴェネツィア・ビエンナーレ(1895年から続く現代美術の国際美術展覧会)でも作品が展示されたほか、イタリアやアメリカなど国内外の多くの展覧会に出品しています。

また、出版にも力を注ぎました。生涯に2冊の複製画集と2冊の版画集を出版しており、建築やデザインに関する雑誌『ウェンディンゲン』では、表紙を多数手がけたほか、自作の特集も組まれています。


エッチング集『グロテスクなイマジネーション』表紙 1918年に出版される 

メスキータは動物や植物モチーフの多くを、アムステルダムのアルティス動物園に取材しました。モチーフの多くを自らの周囲の環境から見いだしました。

多くの版画作品を制作するかたわら、生涯を通じて膨大な数のドローイングを描いています。これらのドローイングは、本人によれば「まったく意図していない無意識の表れ」でした。

木版画などの制作と違って、浮かんだ考えを思いつくまま計画もなく紙に描き連ねていった結果が、ドローイング作品になったのだと考えられます。

1940年5月、オランダはドイツに占領され、ユダヤ人に対する迫害が日に日に厳しくなっていきました。

1944年1月31日深夜、家族ごと逮捕されたメスキータは強制収容所に送られ、そこで75年の生涯を終えました。

エッシャーら教え子たち、知人たちが救い出した多くの作品が、アムステルダム市立美術館、アムステルダム国立美術館、ユダヤ歴史博物館などを中心に収蔵されています。


アムステルダム市立美術館

メスキータが、生涯に制作した版画の総数は400点を超えます。現在確認されている限りで、もっとも多いのが木版画で184点、銅版画が157点、リトグラフ57点、それ以外の技法27点です。

メスキータ展の見どころはここ

メスキータ紹介

メスキータの自画像、妻や息子など身近な人々の肖像画です。木版画の制作も自画像から始まります。メスキータは自画像を晩年まで制作しており、年齢を重ねる様子が趣向を凝らし表現されています。

《髭に手をやる自画像》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1917年

《メメント・モリ (頭蓋骨と自画像)》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1926

メメント・モリは、ラテン語で「自分が必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句です。西洋美術では伝統的なテーマとして広く使われています。1926年、メスキータ58歳のときの作品です。

《ヤープ・イェスルン・デ・メスキータの肖像》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1922

メスキータの息子ヤープ。

人々

メスキータの版画の、シンプルで平面的な作品は浮世絵から。また、装飾的な部分を持つ作品には、アール・デコやモダン・デザインからの影響が見受けられます。

《トーガを着た男》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1923

《うつむく女》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1913

《エクスタシー》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 19

自然

木版画の作品では、細部を省略することでモチーフを単純化し、さらにデザイン的に発展させていくことで、装飾性や幾何学性の強い作品を描きました。

《シマウマ》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1918年頃

「彼はもともと鮮やかに黒と白に色分けされている自然界のモチーフを題材にして、黒と白の明確な表現の木版画を作ることには反対していた。私には彼の声が、昨日のことのように聞こえる一『シマウマっていうのは生きている木版画だ。そのシマウマをもう一度木版にすることは、自制しなくちゃいけない。』あとになって、彼自身が木版画で《シマウマ》を制作していたことを知り、私はどんなに驚いたことか。」M.C.エッシャー

《鹿》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1925

この作品は幾何学性を際立たせた例です。鹿の輪郭や角は、ほぼ直線で描かれています。曲線は目、鼻、耳など一部に用いられているだけです。角はほぼ三角形で、実際にはあり得ない形にまで変えられています。

《パイナップル》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1928

空想

「この例外的な作品群に特定の進化はない。年を取って健康状態が悪くなるにつれ、ほかの仕事はますます手つかずのままになったが、戯れのような空想画は根気よく作り続け、ついにほとんど椅子に座りきりになったときにも、そんな絵を描くためにスケッチブックとペンだけは手離さなかった。」M.C.エッシャー

《ファンタジー : 月を見上げる人》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1914

《ファンタジー : 稲妻を見る2人》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1914

《ファンタジー : 眠る赤ん坊》

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 制作年不詳

『グロテスクなイマジネーション』5 

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 1910

ウェンディンゲン

雑誌『ウェンディンゲン』は、1918年にアムステルダム派の建築家、ヘンドリック・テオドルス・ウェイドフェルト(1885-1987)を中心に創刊されました。

アムステルダム派とは、1910年代から25年頃にかけてアムステルダムを活動の場とした建築家のグループです。生活と美術の統合を目指し、主に労働者階級のための集合住宅を手掛けます。

ウェイドフェルトは、建築以外の問題も取り上げることを意図しており、記事内容は、建築から、絵画、彫刻、演劇、東洋美術など多岐にわたりました。

「変転」を意味する『ウェンディンゲン』の表紙は、アムステルダム派の表現主義からロシア・アヴァンギャルドまで1920年代に起こったさまざまなスタイルの作家がデザインしています。

『ウェンディンゲン』第1巻10号 表紙

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 191

メスキータは『ウェンディンゲン』表紙において、ルドン風の幻想的なものから、アール・デコ風のものまで、木版やリトグラフなどの技法を用いて多様な表現方法を試みています

『ウェンディンゲン』第5巻11.12号 表紙

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 19

『ウェンディンゲン』第12巻1号 表紙

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ 19

メスキータ展のインスタ映えスポットはここ

東京ステーションギャラリー、ギャラリー入口と展示室出口付近です。

メスキータ展の図録はここがすごい

このところコンパクトな図録も多いですが、メスキータは縦長で大きめです。見開きで掲載されている作品で大きなものが、424 × 315mmあります。A3サイズが、420 × 297mmなので、それより大きく見応えがあます。

表紙に描かれているのは抽象画ではなく《うつむく裸婦》の一部をトリミングをしたものです。 


サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ《うつむく裸婦》1920年頃 

各章の扉が表紙のデザインと同じように、作品の一部を拡大トリミングして構成されています。強調された木版の荒々しいタッチと、異なる2点の作品を並べることで作られる、メスキータの意図しない世界です。

ソフトカバー/222mm×342mm/カラー/222ページ

ミュージアムショップ のほか、「PayPayモール」「キュレイターズ」でも購入することができます。

価格=3,080(税込) PayPayモール・送料=全国一律500円(税込)

メスキータ展の混雑状況はここを見る

展覧会の混雑状況をビッグデータから解析するサイトを見ます。
「あの展覧会混んでる?」

メスキータ展のチケットはいくら?

佐倉市立美術館 

当日券 
一般 800円 / 大学生・高校生 600円 / 中・小学生 400円 

前売・団体券
一般 640円 / 大学生・高校生 480円 / 中・小学生 320円

※団体は20名以上

西宮市大谷記念美術館 

当日券 (税込)
一般 1,000円 / 大学生・高校生 600円 / 中・小学生 400円 

前売・団体券(税込)
一般 800円 / 大学生・高校生 800円 / 中・小学生 200円

※団体は20名以上
前売券はローソンLoppi(Lコード56453)で取り扱い、または当館受付にて販売(1/10〜4/3)
西宮市在住65歳以上の方は一般料金の半額(要証明書呈示)
ココロンカード・のびのびパスポート呈示の小中生は無料
心身に障がいのある方及び介助者1名は無料(要手帳等呈示)
割引付ちらしご持参の方は一般1,000円を900円に割引(複製不可

宇都宮美術館 

未定

いわき市立美術館 

未定

メスキータ展の巡回先はここ

佐倉市立美術館  1月25日(土)~3月22日(日)

〒285-0023 千葉県佐倉市新町210

アクセス
京成佐倉駅(南口)
○京成佐倉駅南口より 徒歩8分
南口階段を下りてバスターミナルを越え、正面の坂をのぼった突きあたりが美術館です。
○ちばグリーンバス3番のりば
JR佐倉駅方面行(「JR佐倉駅行」「第三工団行」「和田行」「馬渡坂上行」「西御門行」)約5分、「佐倉市立美術館」バス停下車(170円) 徒歩0分

JR佐倉駅(北口)
○JR佐倉駅北口より 徒歩20分
○ちばグリーンバス1番のりば 
「京成佐倉駅行」「田町車庫行」約10分、「二番町」バス停下車(170円) 徒歩1分

開館時間
10:00~18:00(入館は17:30まで)

休館日
月曜日(祝日の場合はその翌日)・年末年始(12/28~1/4)

お問い合せ
Tel. 043-485-7851
Fax. 043-485-9892
mail muse@city.sakura.lg.jp

西宮市大谷記念美術館  4月4日(土)~6月14日(日)

〒662-0952 西宮市中浜町4-38

 アクセス
○阪神電車
・大阪方面から
「西宮」で普通電車に乗り換え、次の駅「香櫨園」下車。「香櫨園」より南西へ徒歩6分。
・神戸方面から
「御影」または「芦屋」まで特急に乗車、普通電車に乗り換え「香櫨園」下車。「香櫨園」より南西へ徒歩6分。
○JR
JR神戸線「さくら夙川」下車。国道2号線を西へ向かい、夙川沿いを南に下り、南西へ徒歩15分。
○阪急電車
阪急神戸線 特急に乗車、「夙川」下車。夙川沿いを南に下り、南西へ徒歩18分。

開館時間
10:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日
水曜日(祝日の場合はその翌日)・展示入替期間

お問い合せ
Tel. 0798-33-0164
Fax. 0798-33-1699

宇都宮美術館 7月5日(土)~8月30日(日)

〒320-0004 栃木県宇都宮市長岡町1077

アクセス
自動車
○東北自動車道「宇都宮インターチェンジ」から約10km、「鹿沼インターチェンジ」から約14km
○北関東自動車道「上三川インターチェンジ」から約19km
鉄道・バス
○JR東北新幹線「JR宇都宮駅」下車、JR宇都宮駅西口5番バス乗場から関東バス「豊郷台・帝京大学経由宇都宮美術館」行き終点下車(約25分)
○JR宇都宮駅よりタクシーをご利用の場合は約20分

開館時間
9:30~17:00(入場は16:30まで)

休館日
毎週月曜日(祝休日は開館)
※1月13日(月・振休)、2月24日(月・振休)は開館し、1月14日(火)は休館

お問い合わせ
公益財団法人うつのみや文化創造財団 宇都宮美術館
Tel. 028-643-0100 (9:30~17:00)
Fax.028-643-0895

いわき市立美術館  9月12日(土)~10月25日(日)

〒970-8026 福島県いわき市平字堂根町4-4

アクセス
○電車
JR常磐線・磐越東線いわき駅より徒歩12分
○高速バス
高速バス(東京-いわき線、会津若松・郡山-いわき線、福島-いわき線)平中町バス停より徒歩3分

開館時間
9:30~17:00(入館は16:30まで)
7月・8月の毎週金曜日は、20:00まで

休館日
月曜日(祝日の場合はその翌日)・年末年始(12月28日~1月4日)

お問い合せ
Tel.  0246-25-1111 
Fax.  0246-25-111

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